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大川小学校児童津波被害国賠訴訟を支援する会です。

4月26日 控訴審第9回公判 判決言渡し 報告

2018年4月26日午後2時から、仙台高等裁判所101法廷で控訴審第9回公判が開かれ、被告である石巻市と宮城県の組織的過失を認める画期的な判決が言い渡されました。

以下、当日の法廷について報告します。

判決

仙台高等裁判所第一民事部(小川浩裁判長)は、石巻市と宮城県の責任を認め、事前の安全対策の不備について組織的過失があったとして、総額14億3617万4293円の賠償金の支払いを命じました。

裁判所は、大川小学校は義務教育下の公立小学校であり、石巻市教育委員会および校長・教頭・教務主任((以下「校長ら」)は、学校保健安全法26条・29条が規定する児童の生命・身体の安全を確保すべき義務を負っていたとして、これを怠ったことの過失責任を認めました。さらに裁判所は「この義務は、公立学校においては、教育委員会と学校の運営主体である校長に、公教育制度を円滑に運営するための根源的義務を明文化したもの」と述べ、その責任の重さを認めました。

具体的には、教育委員会・校長らは、地震発生時の津波到達に備え、大川小学校の危機管理マニュアルに安全な避難経路と避難場所を記載するなど、事前防災の備えを実行する義務を負っており、教育委員会・校長らの権限は危機管理体制の整備に最大限行使されなければならず、その義務は学校運営者の「自由裁量に任されているわけではない」すなわち「努力義務ではない」と認定しました。

津波の予見可能性についても、宮城県防災会議地震対策等専門部会が作成した平成16年報告に想定されていた地震により、大川小学校が津波の浸水被害を受ける危険があると予測することは十分可能であり、大川小学校を予想浸水区域から除外したハザードマップについては、教師の指示に従わなくてはならない児童の安全を確保する上で、大川小の実際の立地条件に照らして詳細な検討を行うべきであり、独自の立場からその信頼性を批判的に判断する必要があったとしました。なお、「想定されていた地震」とは、東日本大震災(マグニチュード9.0)ではなく、マグニチュード最大8.0の宮城沖地震(連動型)としました。

 判決は、こうした義務において、校長らは職務上、地域住民よりもはるかに高度なレベルの知識と経験が求められ、かつそれを得られる立場にあったと認定しました。すなわち危機管理マニュアルの作成・改訂期限であった平成22年4月30日までに、校長らは避難場所と避難経路・方法を定めておくことが必要不可欠であったがそれを怠ったと認定しました。そして、市教委は提出された危機管理マニュアルが適正なものかどうかを確認・指示すべき義務があったが、これを怠ったと認定しました。 

被告である石巻市が平成20年6月に策定した地域防災計画では、津波からの避難が必要な地区として、大川小学校よりも川上に位置する福地や針岡の一部が指定される一方で、なぜか大川小が立地する釜谷は除外されていましたが、福地・針岡地区が避難が必要とされたのは、地震によって堤防が決壊すれば浸水は免れないと判断されたからと推測され、判決では大川小が立地していた釜谷地区が除外されたことに「合理的理由はない」としました。

判決はまた、追波湾に面した通学区域である長面と尾崎地区は津波浸水域と予測されており、ここから通学する児童は30名を超え、釜谷地区を含めれば、津波浸水区域からの通学児童は震災時の全校児童108名の約半数に達していたと指摘し、津波注意報または警報が発令された場合の児童の引き渡し方法について、事前に保護者と具体的に協議、周知する必要があったと指摘しました。そして、校長らは文科省および石巻市から震災前に引き渡し方法についての事前協議・周知の必要性を何回も紹介・指摘されており、喫緊の課題であったにも関わらず、協議・周知および訓練を怠たり、市教委も不備を是正する指導をしなかったと認定しました。

 被告側は、危機管理マニュアルに事前に津波避難場所・経路・方法を記載することは不可能であったとし、原告側が主張する避難場所はいずれも不適当だと主張しましたが、判決は、危機管理マニュアルの改訂のための時間は十分にあり、避難場所として大川小正門から約700メートルの距離にある「バットの森」を指定・整備することは十分可能だったとしました。この場所は、震災4年前に児童も参加した植樹祭が行われ、震災当時少なくとも半数の児童がここを訪問した経験があったこと、1年生の足でも20分あれば到達できる距離にあることなどから、校長らがこの場所を避難場所として指定・整備し、危機管理マニュアルに記載することは可能だと認めました。

 河北総合支所の防災行政無線で津波の発生が伝えられた14時52分に避難行動を開始していれば、15時30分までにはこの場所への避難を完了できていたはずで、であればこのような甚大な被害は免れたとしました。

裁判所のこれらの判断は、学校保健安全法29条および30条に「学校が所在する地域の実情に応じた」対策を講ずる義務が明記されていることに加えて、石巻市自身が策定した「石巻市教育ビジョン」にも「すべての学校において地域の実情に即した災害対応マニュアルの策定や見直しを行うとともに,関係 機関及び地域住民との連携を密にし,災害時において迅速かつ適切な対応ができる体制の整備に取り組む」ことを宣言し たことを指摘し、被告側が自ら実施すると述べたことを実行しなかったことを明確にして、その責任を問うものでした。 

こうして裁判所は、津波の予見は不可能だったとする被告石巻市・宮城県の主張を退け、石巻市教育委員会および校長らの学校運営者の過失責任を明確に認定し、私たち原告の主張をほぼ全面的に認める判決を下したものです。一審判決が当日現場にいた教員の過失のみを認めたのに対して、控訴審判決は事前防災にかかわる市教委の責任を厳しく認定したことは、私たちの主張に沿うもので、子供たちの命を守る学校防災のあり方について、大きく前進させることが期待できる画期的な内容のものといえます。

ただし、私たちが主張した石巻市側の事後対応の違法性、すなわち、震災直後の救命・救助義務や捜索義務をまったく果たさず、事後に行った生存児童の聞き取り証言を廃棄し、説明会を打ち切り、亀山市長の「自然災害は宿命だ」との心無い発言、さらに真実究明の義務を果たさなかった検証委員会などなど、遺族を傷つける数々の行いについては、判決ではほとんど認定されませんでした。この点については、おおいに遺憾であり、今後の課題でもあると考えます。

なお、判決は本文163ページ、付録を入れると370ページを超える膨大なもので、ここでその全部はとても紹介できず、あくまで概略を述べたものです。判決本文を直接読んでいただくと、裁判所が膨大な事実を仔細に調べ、緻密な論理構成をもって法的責任を明確化したことなどが、難解な法律用語の合間からはっきり浮かび上がり、この判決の意義を理解することができると思います。

 

大川小学校児童津波被害国賠訴訟を支援する会

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